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映画「グランド・マスター」見てきた [映画]

結論から先に言えば見に行ってはいけない

事の発端は、ライブドアのPRニュース。

オフィスでの護身術から恋愛術まで!八極拳などの中国拳法を日常生活で使ってみた。
http://news.livedoor.com/article/detail/7715082/

内容はしょうもないんだが、写真をとった人か指導した人がいいのか、絵面がよい。

最後の方に

「この映画はアクション映画でありながら、恋愛映画としても楽しめる。特に、イップ・マンを好きなのに素直になれず戦い続けるチャン・ツィイーの姿は、ツンデレな女性を好きな男性にはたまらないだろう。」

と、戦いは本編ではないですよとも取れる書き方がされていて、これはやばそうな臭いを感じた。
いつもならこの直感を信じて見に行かなかっただろう。役者も知らなかったし。

ところが、これを友人に教えたところからすべての歯車が狂い始める。

自分:この役者知ってる?
知人:知ってる。見に行く?
自分:あまり気は進まないが行くなら付き合う
知人:でも別の知り合いが仕事かもしれないなぁ

そんなやり取りのあと、自分は眠かったので早々に寝落ちしていたのだが、起きたらSkypeに300近いグループチャットのメッセージが残されていて、行くことが決定していた。

自分が寝落ちしていた間にオブリビオンは、「おねーちゃんとニャンニャンするいつものトム・クルーズ主演映画であるという評判」、字幕が「戸田奈津子」という2つのネガティブ要素と、1日は映画半額である、という好条件が重なり、普段は見に行かないであろう「グランド・マスター」を見に行くことになってしまった。

また、待ち合わせでもミスが続く。駅の改札集合だと思っていたが、知らぬ間に現地集合になっていて、危うく開幕に間に合わないところだった。セーフ。しかし、見れないほうがよかったかもしれない。

IMAXではないのか、スクリーンが若干小さいが、上の方にあったので前の人の頭も気にならなかった。ただ、音量が若干低めかなと思ったがいつもハリウッドの糞うるさいアクション見てるので、まあこんなもんかと思いつつ視聴。

字幕を見に行ったはずなのに開幕でなぜか日本語ナレーションが入り困惑する。その後字幕だったが。
グランド・マスターという響きと、開幕のナレーションで「天下一武道会」が始まるものだと思ってwktkした。
が、だんだん雲行きが怪しくなってくる

まずタイトルがいきなり出てきて主役級の役者名が出てくるが、そういうのはある程度見せてからというのが、ハリウッドの文法である。「うおー、これからおもしろくなりそうだ!」ってところで、いかした音楽とともにタイトル。これがハリウッド流。何が始まるかもわからないうちからタイトル長々と見せつけられたのは良くない。

主人公がただただ強く、殺陣の見せ方があまりよくない。大体詠春拳らしさが伝わりにくい。まあ、主人公自体が天才肌の拳法家なので、ただただ強いっていう感じ。細かい技は多数入っていたが、フレームまで認識しようという自分だからわかるのであって、普通の人が見たら何が起きているのかはさっぱりわからないだろう。もっと視聴者にわかる演出が必要である。

ある程度暴れた後は、主人公が南部の代表になるという話で進んでいく。

が、ストーリーが理解できない。出来の悪いラノベかと思わせるぐらいストーリーがぶっ飛んでいる。内容がどうとかというわけではなく、視聴者に何の断りもなくシーンチェンジが多発するのが原因。おっさんと話していたと思ったらいきなり別の場所でまた別の会話が始まるというような作りになっていて、史実?を突っ込みすぎた結果だろうか。今2度目を見たら理解度は深まるだろうが1度見ただけで完全に理解できるようなストーリーになっていない。

そもそも、中国拳法はみんなバラバラなので、統一したい(深い理由は不明)というのが最初のストーリーで、そこから八極拳とか八卦掌とかいろんな拳法家と拳で語り合うというのが、冒頭で(自分が勝手に)期待したストーリー。

最初の30分ぐらいまでは、そういう流れだった。南部代表として他の流派の人間が軽く手合わせをして主人公に指南する。ただ、主人公は無敵なので、単に難癖付けられただけという見方もある。

そして、主人公が南部の代表になって北部にいこうというところで、日本が攻めてくる(笑)
日本に媚びへつらった国民党、名誉日本人?になった中国人を悪役として描く。
日本人の世話になることを良しとせず、仕事もなくプラプラした結果、幼児が餓死してしまう。
南京ではなぜか職が得られないため、香港に職を求めていく。
香港はなぜか武術家がいっぱいいるらしく、道場を開くのにもチンピラ同士の戦いを行う必要がある。

思うにここでは「文化大革命」が描かれていないのではないか。確か武術家にとって日本との戦争も一大事だったが、文化大革命もかなりの出来事であったと言われていたような。だから、映画だけ見ていると、なんで香港にいったのかがまったく理解できない。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1437506794

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%94%A1%E6%9D%8E%E4%BD%9B%E6%8B%B3

当時の香港は文化大革命の弾圧を免れて中国全土から名だたる武術家が集まって来ていた。


<追記>
文化大革命はもっと後だった気がしたので調べてみたら見事に間違っていたw
正確には文化大革命ではなく「国共内戦」であった。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%85%B1%E5%86%85%E6%88%A6

日本の敗戦後、国民党支配の中国から今の共産党支配へ移行期のときに内戦があり、国民党支持派とされる警察などの「中華民国側の人間」は敵とみなされて殺される時代だった。その当時主人公は警察官だったようで、主人公が香港に行ったのは内戦で殺される心配があったからのようだ。日本軍に豪華な自宅を接収されても頭を垂れずプライドを保ったように伝えられている主人公が、同じ中国人に命を狙われるとは皮肉である。

あと言い訳をさせてもらえれば、共産党政権は大躍進で国全体を疲弊させた後、文化大革命という伝統的な文化の破壊をやっていて、それと記憶が混ざってしまっていたようだ。どっちにしろ中国では武術に対する弾圧が長い間行われていたので、彼が香港に行くのは必然であったろう。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E5%8C%96%E5%A4%A7%E9%9D%A9%E5%91%BD#.E6.97.A7.E6.96.87.E5.8C.96.E3.81.AE.E7.A0.B4.E5.A3.8A

<追記終わり>

この背景がわかると、職を求めて香港に行き、しかもイギリス植民地であったために、出入りが制限されたために、南京に戻ることができなくなった、というストーリーもわかる。しかし、日本人、国民党を悪く描くこの映画において、そのような国辱的な表現はできないうえに、文化大革命は中国の失策国共内戦はただの中国の内戦なので、中国共産党の顔色をうかがった表現をするとこの映画のようにストーリーがぶっ飛んで意味不明になる。

で、香港の地で名を挙げる。ブルース・リーの師匠の話らしいので、最後に出てきた子供がブルース・リーなんだろう。多分。

で、この映画についてちょっと下調べした人は「あれ?」と思うかもしれない。八卦掌の女の人と八極拳の漢がいつでてきたんだと思うだろう。

彼らは、彼らでストーリーがある。

八卦掌の女の人は、南部の元顔役の娘で、上記の日本人に媚びへつらって家門を乗っ取った弟子に復讐していた。一度は決まった婚約を破棄し、父親から受け継いだ八卦掌で弟子を倒し、復讐を成し遂げた。が、その後、人生の目標を見失い、阿片か病気かで一人死んでいく。あ、死ぬ前に「主人公のことが好きでした」みたいなことをいうが、実際は10年以上経ってるわけで・・・主人公は妻子持ちだし。そんなこと言われてもな・・・という主人公の態度と観客が一致する微妙な展開も追加されている。

一方、八極拳のほうは、安清幇(青幇、中国の愛国マフィア)の一員として抗日運動に参加したが、怪我を追っていたところを八卦掌の女に助けられる。その後、やっぱり香港に行き、床屋を開く。マフィアが刺客を送り込んでくるが、八極拳で返り討ちにすると、あまりの強さに弟子が増えていき、床屋の従業員が増えていく。

映画としての時系列は整理してあるが、以上がグランド・マスターのすべてである。

え?南北統一したグランド・マスターが日本と戦って、日本軍を返り討ちにして英雄になったりしないの?と思ったりするかもしれない。

普段はいがみ合っていて流派でいがみ合っていた中国人が、主人公との拳での語り合いのあとに、外の敵(日本軍)と仲良くなった弟子をボスとして戦い勝利する。

これが俺の願っていたストーリーだったが、そんな話ではなかった。

こんな映画見せられるなら、話題の抗日ドラマでも見せてくれたほうがよっぽど面白かったと思う。

その後、中国語のタイトルみたら、「一代宗師」とあった。一代で詠春拳を作った、主人公の生き抜く人間力、天才性の話であるので、今回の内容ともまあ、あってると思う。

でもグランド・マスターはちょっと違うんじゃないかなーと。

大体、公式HP見に行くと、拳法家がいろいろ出てきて強さを競う天下一武道会、そこで勝った人間に与えられる称号が(初代)グランド・マスターみたいな想像が掻き立てられると思うのだが・・・

公式
http://grandmaster.gaga.ne.jp/

このトレーラーは時系列を巧みに操作していて、八卦掌の女が雪の中で鍛錬する姿は、父親が生きていた時代の思い出を阿片を吸いながら回想して死んでいく時のシーンである。

いや、ほんとこのトレーラー作った人に映画をリビルドして欲しいですわ。

ということで、点数をつけるとしたら20点ぐらい。八卦掌が強かったので20点をつけた。実質0点と思ってもらってもよい。

字幕の質が低く、戸田奈津子もびっくりの意味不明なところが最低3箇所はあったが、本当に意味不明すぎて思い出せない。中国のことわざだったりするのだろうか。

映画としての文法を守っていない。3つのストーリーがバラバラで、且つ唐突シーンチェンジするために意味不明。今思い出してみても「1000円で良かった」という感想しか出てこない。

ブルース・リーの師匠に思い入れがある人でないと全く楽しめないだろう。

<追記>

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  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: Blu-ray



我々が期待したであろうグランドマスターは実はすでに映画化されていた。出演者、アクション監督がサモ・ハン・キンポーが出ているなど、こっちのほうが明らかに求めていたものである。
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MEDAPA

ライブドアニュースの写真と動画はいいね。
by MEDAPA (2013-06-01 22:40) 

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